賃貸借契約の解約予告を行う
引っ越しが決まったら、まずやらなければならないのが、いま借りているアパート・マンションなどの賃貸物件の貸し主(大家または不動産仲介業者)に「引っ越すので部屋を出る」旨の連絡をすることだ。これを賃貸借契約の解約予告という。
解約予告は賃貸借契約に基づいてきちんと行わないと思わぬ失敗をすることがあるので注意が必要だ。
解約予告のポイントを押さえておく
アパート・マンションなどの賃貸借契約書には「部屋を出るときは〇ケ月前までに申し出なければないない」という解約予告の告知期間が必ず記載されている。
この解約予告の告知期間は、一般的には「1ケ月前まで」というケースが多いが、なかには「2ヶ月前まで」「3ケ月前までJとしている物件もある。公団住宅の場合は「14日前まで」となっている。
引っ越すときはいつまでに解約予告をすればいいのか、もう ‐度契約書をよく読んで告知期間を確認しておく必要がある。
解約予告の告知期間を守らなかった場合はペナルティを科されても文句が言えない。
解約予告は「lケ月前まで」というケースが多いため契約書の確認もしないで「部屋を出るときは1ケ月前までに言えばいいJと勝手に思い込んでいる人が少なくない。これは非常に危険である。
たとえば契約書の解約予告の告知期間が「3ケ月前まで」となっているのに1ケ月前になって解約予告をした場合は、通常、<3ケ月-1ケ月>で差し引き2ヶ月分の家賃がペナルテイとして請求される。
これは契約書にしたがつて解約予告がなされれば、本来、貸し主が手にできたはずの家賃で、「払え」と言われたら拒否するわけにはいかない。
引っ越しは何かと物入りだけに、このペナルティは痛い。告知期間には十分注意しよう。
賃貸借契約書には解約予告の告知期間が記載されているはずだが、万一記載のない場合は3ケ月前までに解約予告を行う必要がある。
これは民法の「賃借人は特別の取り決めがない限り3ケ月前に予告すること」という規定による。
告知期間1こ発生する”ダブル家賃”
解約予告にはいくつかのパターンがある。最も一般的なのは、新しい部屋を決めて契約した時点でいま住んでいる部屋の貸し主に解約予告を行うケースだ。「新しい部屋を決めてかる出る」というパターンである。
この場合、新しい部屋は契約が成立した時点で家賃が発生する。一方、いま住んでいる部屋は、告知期間をlヶ月とすれば、解約予告をしてからlヶ月は家賃を払わなければならない。
つまり、「新しい部屋を決めてから出るJ場合は、新旧の2つの部屋の家賃が解約予告の告知期間の分だけダブルでかかってくるのだ。
このダブル家賃は引っ越しの最大の難問の一つで、これにいかに対処するかは引っ越しの支出額を大きく左右する。
ダブル家賃にどう対処するか
ではダブル家賃を回避する、あるいは少しでも出費を安く抑えるにはどうすればいいか。考えられるいくつかの対処法は。
部屋を決めてから解約予告をしたのでは必ず告知期間の分だけダブルで家賃が発生する。告知期間が2ヶ月、3ケ月と長い場合は大変な負担である。
そこで、告知期間が長い場合は、部屋を決める前に解約予告を先にしてしまう。「先に解約予告をしてから新しい部屋を探す」わけだ。
告知期間が3ケ月なら、まず最初に「3ケ月後に部屋を出る」と大家に解約予告をして、それか喝部屋探しを始めるのだ。
そして、たとえば9月の末に「12月いっぱいで部屋を出る」と予告した場合は、なるべく12月の末に近い時点で新しい部屋を決めて契約するのが理想だ。
そうすれば新しい部屋の家賃は日割りで数日しか発生しない。
ただし、この方法は告知期間が1ケ月しかない場合は難しい。新しい部屋探しが短期勝負になるため、物件的に妥協を強い皓れるし、万一見つからなかった場合は、いま住んでいる部屋を出なければならない以上、宿なしになる恐れがあるからだ。
解約予告を先にして告知期間ギリギリのタイミングで新しい部屋を探すー。告知期間lケ月で先に解約予告を行う場合は、相当の覚悟が必要である。
ダブル家賃の対処法で最も有効かつ現実的なのは建築中の新築物件を予約する方法だ。
建築中の賃貸物件は竣Iが近づいてくると入居者募集の旗や看板などを出すケースが多い。だいたい2〜 3ケ月前かし予約を受け付けるのが普通で、通常、一定の手付金を払えば、予約の申し込みができる。
たとえば人居開始予定目が9月30日で、 7月の末かい入居予約の申し込みを受け付けている建築中の新築賃貸マンションがあるとしよう。仮に7月末にすぐに予約申し込みを行っても、家賃が発生するのは人居が可能になる9月30日以降。それまでは建築中で住めないから当然家賃は発生しない。
これは、引っ越しを考えている人間には実に都合がいい。9月30日の入居が確実なら、いま住んでいる部屋の告知期間を1ケ月とすれば、解約予告は「9月いっぱいで出ますJと8月末に言えばちょうどいい。
しかもこの場合、新しい部屋の家賃は入居可能な9月30日以降でないと発生しないから、払わなければならない家賃は、いま住んでいる部屋の9月分だけですむ。
つまりこの方法なら、「新しい部屋を決めてかい出る」というj重常の解約予告のパターンでは避けてi重れない「告知期間のダブル家賃」が発Jiしないのである(※ 厳密には9月30日の1日分だけダブル家賃が発生する)。
この方法は、既存の物件でも人居者の選出時期があらかじめ早くからわかっている場合は利用可能で、新築物件と同様に告知期間のダブル家賃を回避することができる。
解約予告を先にして告知期間ギリギリのタイミングで新しい部屋を探す、あるいは新築物件や入居者の退出時期があらかじめわかっていて入居の予約申し込みができるー。
こうしたケースを除けば、ある程度のダブル家賃は仕方がない。あとは解約予告にともなうダブル家賃を少しでも減らす道を探るしかない。ではどうすればいいか。これはもうひたすら新しい部屋の貸し主(大家または不動産仲介業者)に頭を下げて契約した当月分の日割り家賃をマケてもらうしかない。
月初めの契約だとほぼlヶ月分の家賃になってしまうが、これを何とか半月分にしてもいう。25日頃の契約なら当月分の日割り家賃は思い切ってタダにしてもらう。交渉次第では十分可能である。ダメでもともとだと思つて、とりあえず交渉してみるといい。
10万円の家賃をlヶ月30日の日割りにすると、 1日あたり約3300円。5[1分マケてもらえばl万6500円、10日分なら3万3000円である。り|っ越しにはとにかくお金がかかる。節約できるところではとことん節約した方がいい。
明け渡しと鍵の返却の確認
解約予告の際には、借りていた物件の退去時の明け渡しと鍵の返却方法について明確に確認しておくこと。
一般的には荷物の搬出が終わって部屋がカラになった時点で、借り主立ち会いのもとで貸し主(大家または不動産仲介業者)に部屋を見てもらい、借り主負担の修繕箇所について確認し、そのうえで鍵を返却する。
貸し主によっては借り主の立ち会いを求めず、「鍵だけ返して下さい。修繕すべきところがあれば、あとで連絡します」というケースもある。
しかし、これだと借り主負担の修繕箇所を確認できず、あとでどれだけ費用を請求されるかわからない。敷金の返還額を不当に減額されないためにも、立ち会い不要と言われても必ず立ち会うようにしよう。
この際、修繕に関する同意書を示し、署名・捺印を求める貸し主があるが、借り主として納得できない場合は、絶対に署名・捺印|してはいけない。
また、借り主負担の修繕費用については、必ず明細付きの見積書(請求書)を発行してもらうこと。
そして不当に高いとか、本来なら貸し主が負担すべき費用まで含まれているような場合は、必ず説明を求め、納得できない場合は、支払いを拒否すべきである。
なお借り主負担の修繕費用は敷金返還の問題とからむため極めて重要である。